2025/04/19投稿者:9Eキャリアカスタマーサクセス編集部

【目的別】カスタマーサクセスおすすめ本11選|初心者・実務スキル・マネージャー向けに厳選紹介

カスタマーサクセスとは、既存顧客の成功体験を支援し、継続的な価値提供を行う取り組みを指します。これは、SaaSやサブスクリプション型ビジネスに携わるすべての人にとって、LTVの最大化やチャーン率の改善に欠かせない必須知識です。

 

しかし、「カスタマーサクセスを学びたい」と思っても、多くの人が「何から手をつければいいかわからない」「自分のレベルに合った本が見つからない」といった悩みを抱えているのではないでしょうか。

 

本記事では、初心者・実務担当者・マネージャーなど、それぞれの目的や立場に合わせて選べる、カスタマーサクセスに役立つおすすめの書籍を11冊厳選してご紹介します。基本から実務スキル、チーム設計や戦略まで、あなたの学びのフェーズにぴったりの一冊が見つかるはずです。

 

この記事を通じて、カスタマーサクセスの本質的な理解を深め、明日からの仕事にすぐ活かせる実践力を身につけましょう。

 

カスタマーサクセスとは

働く男性の後ろ姿

カスタマーサクセス(Customer Success)とは、直訳すれば「顧客の成功」。その名の通り、自社の製品やサービスを通じて、顧客が望む成果を得られるよう継続的に支援する活動を指します。

 

重要なのは、「顧客がサービスを継続して利用しているから成功」という発想ではなく、顧客がビジネス上の成果を得ることが本質であるという点です。アップセルやクロスセル、リテンション率の向上といったKPIは、その結果として現れる副次的な成果にすぎません。

 

言い換えれば、顧客が成功体験を得た結果として、継続利用や追加購入が生まれるのです。

 

しばしば、カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いについても質問されます。カスタマーサポートが顧客からの問い合わせに受動的に対応するのに対し、カスタマーサクセスは顧客の成功を先回りして支援する、能動的な存在です。

 

たとえば、「導入後1か月以内にダッシュボード設定が完了していない顧客には、自動で個別セッションを提案する」といった取り組みは、まさにカスタマーサクセスの一例です。

 

このような支援活動は、企業側にも大きなメリットをもたらします。顧客が自社サービスに価値を感じて継続利用や紹介を行うことで、LTV(顧客生涯価値)の向上、解約率の低下、新規獲得コストの削減など、ビジネスの持続性を高める要因となります。

 

カスタマーサクセスは、もはや単なる部門ではありません。企業文化や組織戦略の中核として位置付けるべき、重要な考え方なのです。

 

カスタマーサクセスが重視される背景

勉強をする男性

カスタマーサクセスの重要性が高まっている背景には、ビジネスモデルの変化と顧客行動の変容という二つの大きな潮流があります。とりわけ、SaaSやサブスクリプション型ビジネスの拡大は、企業と顧客との関係性を根底から変えました。

 

従来の「買い切り型」では、購入が完了した時点で企業にとっての成果は一応成立していました。一方、サブスクリプション型では、契約が継続されることで収益が積み上がる構造となるため、初回契約はゴールではなく、スタート地点にすぎません。重要なのは、「顧客がどれだけ長く、継続的に価値を感じてくれるか」という視点です。

 

さらに、クラウドサービスの進化によって、顧客が他社製品に容易に乗り換えられる環境が整いつつあります。契約のハードルが下がり、サービス間の違いが見えづらくなる中で、「解約されない理由」を提供し続けることが競争力の源となっています。

 

こうした背景の中で注目されているのが、「8:2の法則(パレートの法則)」と「5:25の法則」です。

 

  • 8:2の法則:企業の売上の約80%は、上位20%の顧客から生み出されている
  • 5:25の法則(ベイン・アンド・カンパニー):解約率を5%改善するだけで、利益が25%以上向上する可能性がある

これらの法則は、既存顧客への価値提供が企業利益に直結することを端的に示しています。新規獲得に投資を続けるよりも、既存顧客の成功と満足度を高めることのほうが、結果的にROI(投資対効果)が高まるのです。

 

実際、日本国内では人口減少による市場の縮小が進行しており、いかに多くの顧客を獲得するかではなく、いかに既存顧客に継続して利用してもらえるかが重視されるようになっています。

 

さらに、カスタマーサクセス活動を通じて得られるインサイトは、マーケティングやプロダクト開発にも波及します。顧客からのフィードバックや具体的な活用事例は、UIの改善やオンボーディング施策の洗練に役立ち、顧客体験の質的向上につながります。

 

このように、カスタマーサクセスはもはや「サポートの強化」にとどまりません。収益性、プロダクト価値、ブランド評価のすべてを押し上げる戦略的要素として、企業の中核に位置付けるべき存在となっているのです。

 

カスタマーサクセスの赤本・青本

デスクで勉強をする髭の男性

カスタマーサクセスを体系的に学びたいと考えたとき、最初に手に取るべきとされるのが、通称「赤本」と「青本」と呼ばれる2冊の書籍です。

 

「まずはこの2冊を読め」と言われるほど、カスタマーサクセスの本質と実務を理解するうえで重要な位置づけとなっています。それぞれの概要と魅力を紹介しましょう。

 

『カスタマーサクセスとは何か――日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」』

いわゆる赤本と呼ばれる本書は、カスタマーサクセスという概念を日本企業に浸透させた立役者とも言える一冊です。著者の弘子 ラザヴィ氏は、多くの企業の成長支援に携わる現場経験豊富なコンサルタント。グローバルと日本市場の違いを踏まえた上で、日本企業がどのようにカスタマーサクセスを導入すべきかを具体的に解説しています。

 

本書の最大の特徴は、「日本企業における実装可能性」を重視している点です。欧米発のフレームワークをそのまま輸入するのではなく、日本特有の組織文化や営業体制において、どうすればカスタマーサクセスが機能するかを丁寧に示しています。

 

たとえば、属人的になりがちな営業・サポート体制から、顧客の成功にフォーカスした組織への変革をどう進めるべきか。あるいは、受け身ではなく提案型の対応へと現場のマインドセットを変えるためには、どのような社内教育・評価制度が必要か、といった実践的な問いに対し、ロジカルかつ具体的に答えてくれる内容です。

 

さらに、国内企業の事例として、Sansan、メルカリ、リクルートマーケティングパートナーズも紹介されています。

 

【おすすめポイント】

  • カスタマーサクセスの「本質」と「誤解されやすい点」の切り分けが丁寧
  • 日本企業特有の課題(縦割り・営業主導文化など)への解決アプローチを提示
  • チーム体制やKPI設計まで幅広くカバーしており、実務導入に役立つ

本記事では多くの書籍を紹介していますが、読みやすさ、分かりやすさは本書がダントツに高いです。カスタマーサクセスに初めて触れる方だけでなく、「なんとなくは知っているけれど、本質がつかめていない」と感じている実務担当者にも、ぜひ手に取ってほしい一冊です。

 

  • 出版社:英治出版
  • 著者:弘子 ラザヴィ
  • 発売日:2019年7月3日
  • ページ数:248ページ
  • 参考価格:1,980円 ※税込み、2025年4月時点

▼ECサイト販売ページ

Amazon販売ページ

楽天販売ページ

 

『カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』

青本版として知られるこの書籍は、アメリカでのカスタマーサクセスの第一人者であるニック・メータ氏らが執筆した世界的ベストセラーです。タイトルにもあるように、サブスクリプション時代の競争優位を築くための10の原則を中心に、カスタマーサクセスの設計・運用を網羅的に解説しています。

 

本書は、グローバルスタンダードとしてのカスタマーサクセスの型を学ぶうえで最適です。赤本が入門者を含む幅広い層を対象にしているのなら、青本は中級者以上または実務担当者を対象にしています。まずは赤本でカスタマーサクセスの基礎をおさえたうえで、青本で実践的な知識やノウハウを身に着けるとよいでしょう。

 

より詳細な内容や活用法については、別記事で深掘りしていますので、以下よりご覧ください。

 

出版社:英治出版

著者:ニック・メータ、ダン・スタインマン、リンカーン・マーフィー

発売日:2018年6月6日

ページ数:386ページ

参考価格:2,090円 ※税込み、2025年4月時点

▼ECサイト販売ページ

Amazon販売ページ

楽天販売ページ

 

▼カスタマーサクセスの青本については、こちらの記事で詳しく深掘り解説しています。

カスタマーサクセスの青本を徹底解説! 対象読者、赤本との違い、レビューまで

 

カスタマーサクセスに必要なスキルを身に着けるのにおすすめの本3選

本を読む人の手

カスタマーサクセスの本質が顧客の成功に伴走することである以上、製品やサービスに詳しいだけでは不十分です。真に価値ある支援を行うには、課題発見力、傾聴力、データ分析力といった汎用的かつ高度なビジネススキルが求められます。

 

このような背景から、コンサルティング業界からカスタマーサクセス職へ転身する人が多いのも特徴です。

 

以下では、これらのスキルを体系的に学べる実践的な書籍を3冊紹介します。

 

『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』

カスタマーサクセスの現場では、「顧客が本当に抱えている課題は何か?」を的確に見極める力が欠かせません。本書は、その課題設定力=イシュー分析力を高めるための思考法を提供します。

 

著者は、マッキンゼー出身のコンサルタント・安宅和人氏。情報過多な現代において、成果につながる本質的な問いに集中するためのフレームワークが解説されています。

 

たとえば、顧客が「もっと使いやすくしてほしい」と要望してきた場合でも、その言葉をそのまま受け取るのではなく、背景にある行動や心理を読み解く必要があります。もしかすると、UIに問題があるのではなく、導入後の具体的な活用イメージが描けていない可能性もあります。

 

このように、表面的な要望にとどまらず、真の課題に迫る姿勢こそがカスタマーサクセスの要となります。

 

【おすすめポイント】

  • 課題の本質を見極める思考フレームワークを習得できる
  • 「どこに時間と労力を集中すべきか」を論理的に判断できるようになる
  • 見当違いなサポートや提案を減らせる

 

顧客の言葉の背後にある真意を読み取り、適切な支援を設計するうえで、本書の思考法は大いに役立つでしょう。

 

  • 出版社:英知出版
  • 著者:安宅和人
  • 発売日:2010年11月24日
  • ページ数:248ページ
  • 参考価格:761円 ※税込み、2025年4月時点

▼ECサイト販売ページ

Amazon販売ページ

楽天販売ページ

 

『聞く技術 聞いてもらう技術』

カスタマーサクセスにおいて、もう一つ重要なスキルが傾聴力です。本書は、ビジネス・教育・医療など多様な分野で高く評価されている「聴く力」の教科書として知られています。

 

単に相手の話を聞くだけでなく、「安心して話せる場を整える」「本音を引き出す」「信頼関係を築く」といった対話の土台を整える技術が、体系的に解説されています。カスタマーサクセスにおいては、顧客が不満や課題を言葉にできる状態をつくること自体が、大きな成果につながるため、本書を紹介するに至りました。

 

たとえば、オンボーディング中に「特に問題はありません」と語る顧客がいたとしても、実際には「効果が見えていない」「操作に不安がある」といった本音を抱えているケースも少なくありません。こうしたサインを見逃さず、丁寧に向き合う姿勢こそが、解約リスクの抑制に直結します。

 

【おすすめポイント】

  • 「話す」ではなく「聴く」に焦点をあてた実践的なコミュニケーション書
  • 顧客の本音や微細なサインに気づく感度が養える
  • チーム内の信頼構築や1on1にも応用可能

 

顧客の「言葉にならない声」を引き出せるカスタマーサクセス担当者は、顧客から信頼され、選ばれ続ける存在となるでしょう。

 

  • 出版社:筑摩書房
  • 著者:東畑 開人
  • 発売日:2022年10月11日
  • ページ数:208ページ
  • 参考価格:946円 ※税込み、2025年4月時点

▼ECサイト販売ページ

Amazon販売ページ

楽天販売ページ

 

『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』

最後に紹介するのは、定性的なヒアリングだけでなく、定量的なデータからも洞察を得たい人に向けた一冊です。カスタマーサクセスの取り組みを評価・改善するうえで、データドリブンな視点は欠かせません。

 

本書では、因果関係を正しく見極める方法や、バイアスに惑わされずに判断する思考法を、実際のビジネス事例を通じてわかりやすく解説しています。

 

【おすすめポイント】

  • ビジネスにおける「数字の読み方」を根本から理解できる
  • 「相関」と「因果」の違いを区別できる分析力が身につく
  • 施策評価やナッジ設計などにも応用可能

 

データをただ確認するだけではなく、「何を、どう見るか」によって顧客理解の深さは大きく変わります。現場で実績を出したいカスタマーサクセス担当者にとって、読み応えのある一冊です。

 

  • 出版社:光文社
  • 著者:伊藤 公一朗
  • 発売日:2017年4月18日
  • ページ数:284ページ
  • 参考価格:858円 ※税込み、2025年4月時点

▼ECサイト販売ページ

Amazon販売ページ

楽天販売ページ

 

カスタマーサクセスの実務ノウハウを学ぶのにおすすめの本3選

メモを取る人の手

カスタマーサクセスの概念を理解し、必要なスキルを身につけたら、次のステップは「現場でどう実践するか」です。とくにSaaSやBtoBサービスでは、顧客フェーズに応じた対応、アカウントヘルスの可視化、オンボーディングの設計、ハイタッチ/ロータッチ戦略の構築など、多くの実務的課題に直面します。

 

ここでは、カスタマーサクセスの理論と実務をつなぐことを目的に、「戦略」「設計」「ストーリー」の3つの視点から実務力を高められる書籍を紹介します。

 

『カスタマーサクセス実行戦略』

本書は、日本企業におけるカスタマーサクセスの導入と運用を、理論と現場の双方から体系的に解説した実践書です。著者は、Sansanにてカスタマーサクセス組織を立ち上げた経験を持ち、米国Gainsight社のフレームワークを基盤に、日本市場向けに最適化された戦略的な運用モデルを提示しています。

 

特徴的なのは、「カスタマーサクセスを組織としてどう設計し、機能させるか」というマネジメント視点を軸にしている点です。個別施策の紹介にとどまらず、企業成長と連動したカスタマーサクセスの役割を明確に位置づけています。

 

たとえば、本書では以下のような実務的内容が網羅されています。

 

  • カスタマーライフサイクルに応じたフェーズ設計と、適切なサクセス施策の選定
  • 営業やサポート部門との役割分担と連携の要点
  • ハイタッチ/ロータッチ/テックタッチの活用モデルとその使い分け
  • 顧客のヘルススコアの可視化と、それを起点とした施策設計
  • KPIの構築と、CSチームの評価制度に関する実務的知見

 

これらは、単に理論を語るものではなく、現場で実装・運用するためのプロセスを具体的に示したものです。特に、SaaSやサブスクリプション型ビジネスにおいて再現性のある支援を構築したい企業にとって、有効な手引きとなるでしょう。

 

加えて、もともとWebメディアの記事をベースに書籍化された経緯もあり、文章も読みやすいです。カスタマーサクセス未経験者でもイメージしやすい一方で、すでに現場を担っているマネージャー層にとっても、施策の検証や再設計のヒントが得られる構成となっています。

 

カスタマーサクセス組織の立ち上げ期から、拡張・改善フェーズまで幅広く活用できる本書は、まさに実務教科書と呼べる一冊です。

 

【おすすめポイント】

  • Gainsightの知見をもとに、日本市場向けに最適化された戦略フレームワークが学べる
  • CSチームの立ち上げから、KPI設計、評価制度、施策運用まで幅広くカバー
  • 未経験者にもやさしく、実務担当者にとっては再整理・高度化にも役立つ内容

 

  • 出版社:翔泳社
  • 著者:山田 ひさのり
  • 発売日:2020年9月1日
  • ページ数:168ページ
  • 参考価格:1,305円 ※税込み、2025年4月時点

▼ECサイト販売ページ

Amazon販売ページ

楽天販売ページ

 

『CX(カスタマー・エクスペリエンス)戦略―顧客の心とつながる経験価値経営』

本書は、企業がCX(顧客体験)を戦略的にマネジメントする方法を体系的に解説した実務書です。CXが抽象的に語られがちな中で、心理学や経営理論をもとに「感情的価値」を定義し、それを経営指標としてどう扱うべきかを論理的に解き明かしています。

 

冒頭では、「なぜ今、CXが重要なのか?」という問いに対し、顧客行動の変化やデジタル社会における企業の存在意義といった観点から、CXを重視すべき背景を多角的に考察。単なる接客品質の問題ではなく、「選ばれる企業」であり続けるための経営思想としてのCXの重要性を提示しています。

 

本書の中核をなすのは、CX施策を以下の4タイプに分類するアプローチです。

 

  • 現場社員による施策(自発的なおもてなし)
  • 店舗・コールセンターなど現場に近い部門の仕組みづくり
  • 経営レベルでの取り組み(価格設定、制度設計、ブランド方針など)
  • 商品・サービスそのものにCXを組み込む(プロダクト設計、UI/UX)

これらを「ジョハリの窓」に当てはめて可視化することで、自社のどの領域にCX資源があるのか、どの層へアプローチできているのかを俯瞰的に把握することが可能です。

 

さらに、顧客満足との違いや、カスタマーサクセスとの関係性、DXと連動したCX戦略の構築、定量的な効果測定に至るまで、感覚的価値にとどまらないCXの捉え方が多面的に紹介されています。

 

チャールズ・シュワブ、メットライフ、カールスジュニア、ウェルズ・ファーゴなど、海外企業の先進事例も豊富に掲載されており、国際的な視点からの学びも深められる構成です。

 

【おすすめポイント】

  • CXを「感情的価値」として定義し、収益との因果関係を理論的に理解できる
  • CX施策を4レベルに整理し、「組織としてどう仕組み化するか」が見える
  • DXとの連動を含めた「エクスペリエンステクノロジー」の実装例が豊富

 

  • 出版社:東洋経済新報社
  • 著者:田中 達雄
  • 発売日:2018年9月4日
  • ページ数:224ページ
  • 参考価格:2,500円 ※税込み、2025年4月時点

▼ECサイト販売ページ

Amazon販売ページ

楽天販売ページ

 

『実践カスタマーサクセス BtoBサービス企業を舞台にした体験ストーリー』

本書は、カスタマーサクセスの全体像と実務の流れを物語形式で学べる入門書です。BtoBサービス企業を舞台に、突然CSを任された主人公が、試行錯誤を繰り返しながら業務を構築し、チームを育てていく様子が描かれています。

 

最大の特徴は、ストーリーを通じて実務を疑似体験できる構成にあります。カスタマーサクセスに関する用語やフレームワーク、マネジメント課題が物語に自然に織り込まれており、「知識として覚える」のではなく、「状況を通して理解する」スタイルで学べます。

 

各章では専門家による補足解説が加えられており、「この場面ではどう考えるべきか」「どのように対応すべきか」といった実践的な行動指針も明示。読み物として楽しみながら、実務に直結する知見が得られる点が魅力です。

 

物語では、営業との役割分担、オンボーディングの設計、継続率向上に向けたデータ活用、カスタマーのセグメンテーション、チームビルディングなどが丁寧に描かれ、組織成長と個人スキルの両側面から学べる構成になっています。

 

【おすすめポイント】

  • 物語を通じて、カスタマーサクセスのリアルな現場感覚が得られる
  • ストーリー+専門家の解説で、読後すぐに実務に活用できる
  • 初学者に最適な導入書でありつつ、体系的理解にもつながる

 

  • 出版社:日経BP
  • 著者:藤島 誓也
  • 発売日:2023年1月6日
  • ページ数:216ページ
  • 参考価格:2,200円 ※税込み、2025年4月時点

▼ECサイト販売ページ

Amazon販売ページ

楽天販売ページ

 

カスタマーサクセスのマネージャーを目指す人におすすめの本3選

デスクでメモを取る男性

カスタマーサクセスの現場で経験を積んだ先に、多くの担当者が目指すキャリアの一つが、マネージャーや責任者としてのポジションです。しかし、個人の実務スキルと、チームや事業を成長させるマネジメントスキルは、まったく異なる能力といっても過言ではありません。

 

ここでは、組織設計・成果指標のマネジメント・経営との連携といった観点から、マネージャーとしての視座を養うために役立つ書籍を3冊紹介します。

 

『カスタマーサクセス・プロフェッショナル――顧客の成功を支え、持続的な利益成長をもたらす仕事のすべて』

本書は、カスタマーサクセスマネージャー(CSM)の役割と実務を網羅的に解説した、国際水準の実践書です。著者は、米国Gainsight社のチーフカスタマーオフィサーであり、SaaS・サブスクリプション型ビジネスの最前線で得た知見をもとに、CSMに求められるスキル、思考、行動を具体的に提示しています。

 

構成は、概念の整理からスキルの習得、実務運用、キャリア形成までを段階的に学べる4部構成です。

 

  • 第1部:カスタマーサクセスマネジメントの意義と役割
  • 第2部:CSMに求められるスキルと行動様式(共感、関係構築、傾聴など)
  • 第3部:KPI設計、カスタマージャーニーの管理、リスク対策、VoC活用、収益戦略
  • 第4部:チームマネジメントとCSMのキャリアデザイン

 

特に注目すべきは、「真実の瞬間(Moments of Truth)」という概念に基づいた顧客接点の設計と再現可能な対応フレームです。CSMがどのように信頼を構築し、課題解決へと導くべきかが、コンサルティング的なアプローチで体系化されています。

 

また、カスタマーサクセスが属人的になりやすい現場においては、暗黙知を形式知に転換する仕組み=SECIモデル的アプローチが重要です。本書では、その再現性を高める工夫も多数紹介されており、マネジメントにおける本質的な学びが得られます。

 

やや専門用語が多く、ボリュームもありますが、「CSMとして何をすべきか」が明確になる指針書として確かな価値を持つ一冊です。プレイヤーからリーダーへの転身を目指す方にとっては、まさに手元に置いておきたい実務書といえるでしょう。

 

【おすすめポイント】

  • CSMに求められるスキルや日々の実務を網羅的に解説
  • 個人の実力強化から組織マネジメント、キャリア設計までを包括
  • アメリカ発の最新事例と理論で、グローバル水準のCS戦略が学べる

 

  • 出版社:英治出版
  • 著者:アシュヴィン・ヴァイドゥヤネイサン 、ルーベン・ラバゴ
  • 発売日:2021年3月24日
  • ページ数:272ページ
  • 参考価格:2,530円 ※税込み、2025年4月時点

▼ECサイト販売ページ

Amazon販売ページ

楽天販売ページ

 

​『カスタマーサクセス経営: 顧客に成功と優れた体験(CX)を届けるプロダクト主導型成長(PLG)戦略』

本書は、プロダクトを軸に企業成長を実現する「PLG(Product-Led Growth)」戦略と、カスタマー体験を重視した経営手法を組み合わせて解説した実践書です。SaaSをはじめとするデジタルビジネスにおいて、プロダクトそのものが価値提供と顧客獲得の中心になる時代において、なぜPLGが重要なのか、どう導入すべきかを体系的に学べます。

 

冒頭では、カスタマー体験の進化と、その重要性が増している背景を紹介。従来のセールス主導型成長(SLG)から脱却し、データに基づいた体験の個別最適化と、部門横断での価値提供を軸とする「カスタマーサクセス経営」の必要性が論じられます。

 

中盤からは、PLGの具体的な導入プロセスにフォーカス。以下のようなテーマが網羅的に取り上げられています。

 

  • プロダクト視点によるカスタマージャーニーの再設計
  • PQL(Product Qualified Lead)を活用した指標設計
  • テックタッチによるエンゲージメント強化と継続率の改善
  • 部門間連携を促すプロダクト主導型組織の構築方法
  • CXとPLGを両立させるKPI設計と組織文化の醸成

 

さらに、欧米発のPLG理論を日本企業にどう適用すべきかについても、翻訳者による独自の視点で解説が加えられており、国内の実務家にとっても理解しやすい構成となっています。

 

SaaS業界はもちろん、顧客接点に課題を抱えるあらゆる企業にとって、プロダクト体験を起点とする成長戦略のヒントが詰まった一冊です。営業・マーケティング・CS・開発など、部門横断でカスタマーサクセスに取り組む方に強く推奨されます。

 

【おすすめポイント】

  • PLG戦略の全体像から実行フェーズまでを体系的に学べる
  • 「顧客体験×プロダクト」の融合視点は、CS部門だけでなく経営層にも有用
  • 翻訳+解説のハイブリッド構成で、日本市場への応用にも対応

 

  • 出版社:株式会社スリースパイス
  • 著者:ミッキー・アーロン、ニック・ボンフィーリオ
  • 発売日:2022年7月22日
  • ページ数:219ページ
  • 参考価格:2,178円 ※税込み、2025年4月時点

▼ECサイト販売ページ

Amazon販売ページ

 

『THE MODEL(MarkeZine BOOKS) マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』

カスタマーサクセスマネージャーは、顧客の成功を支援するだけでなく、マーケティング、インサイドセールス、営業など他部門と連携し、顧客体験全体の設計を支える橋渡し役としての役割も担います。

 

そのような立場で成果を上げるには、全社的なレベニュープロセスの理解と、部門間の共業設計が欠かせません。本書『THE MODEL』は、そうしたCSMに求められる構造的視野を育む実践的な一冊です。

 

最大の特徴は、「分業から共業へ」というテーマのもと、以下の4部門の連携プロセスを詳細に描いている点にあります。

 

  • マーケティング(見込み顧客の獲得)
  • インサイドセールス(商談の創出)
  • フィールドセールス(契約の獲得)
  • カスタマーサクセス(定着・継続・LTV最大化)

 

これらを「顧客のライフサイクル」に沿ったプロセスとして統一的に設計・運用する考え方は、CSMにとって*自部門の価値を他部門とどう連携させるか”を理解するための地図となります。

 

中でも注目すべきは、「逆流のフィードバック設計」という視点です。CSMが顧客の声や成功事例をマーケティングや営業へと還元することで、組織全体の改善と再成長につながる仕組みが描かれています。

 

CSMは単なる運用者ではなく、組織のナレッジエンジンであるべきだというメッセージが、随所に込められています。

 

【おすすめポイント】

  • CSMが関わる前後の全プロセスを理解し、自部門の意義を再認識できる
  • 顧客の声を活かして、組織全体の改善に貢献する仕組みが学べる
  • 共業プロセスを理解することで、「実務担当」から「ビジネス設計者」への視座が得られる

 

  • 出版社:翔泳社
  • 著者:福田 康隆
  • 発売日:2019年1月30日
  • ページ数:328ページ
  • 参考価格:1,980円 ※税込み、2025年4月時点

▼ECサイト販売ページ

Amazon販売ページ

楽天販売ページ

 

本を有効活用してカスタマーサクセスの知識を深めよう

本記事では、初心者・実務担当者・マネージャーといったステージ別に、役立つ書籍をご紹介しました。ここで取り上げた本は、それぞれがカスタマーサクセスの一側面を深く掘り下げており、読み手の経験や立場によって得られる学びも変わってきます。

 

重要なのは、読むだけで終わらせず、実際の業務にどう落とし込むかです。たとえば、赤本や青本で理念を学んだあと、イシュー分析や傾聴のスキル本で「顧客の本質的な課題を見抜く力」を身につける。そして、データ分析の知見を取り入れて、CS活動の効果測定を行うことで、再現性のある仕組みに昇華させる。

 

こうした知識と実践の循環こそが、プロフェッショナルなCSを生み出します。

 

カスタマーサクセスの世界は、まだまだ進化の途中です。市場の変化とともに、求められる知識・スキル・役割も変わっていきます。だからこそ、体系立った良書を味方につけ、学びをアップデートし続ける姿勢が何よりも大切です。

9Eキャリア(カスタマーサクセス)は業界初のカスタマーサクセスに特化した転職エージェントです。
カスタマーサクセスへの転職に精通したエージェントによる、ハイクオリティかつ親身なご支援をお約束いたします。

まずは会員登録いただき、カスタマーサクセス経験を活かしたキャリアアップや未経験からのキャリアチェンジなどお気軽にご相談ください。

Copyright© 9Eキャリアカスタマーサクセス All Rights Reserved.

ページトップに戻る