2025/04/21投稿者:9Eキャリアカスタマーサクセス編集部

カスタマーサクセスの青本を徹底解説! 対象読者、赤本との違い、レビューまで

カスタマーサクセスの青本とは、業界をリードするGainsight(ゲインサイト)社のCEOが執筆した書籍であり、顧客の成功を起点に企業の持続的成長を実現するための原則を体系的にまとめています。

 

SaaSやサブスクリプションモデルを採用するBtoB企業のカスタマーサクセスマネージャー、またはその職種への転職を検討している方にとって、実務の指針となる必携の一冊です。

 

一方で、「実際にはどんな内容なのかがわからない」「赤本との違いは?」「初心者には難しそう」といった疑問を持つ方も少なくありません。

 

そこで本記事では、「青本」の概要、想定読者層、読者のレビュー、さらに「赤本」との違いに至るまで、要点を整理してわかりやすく解説します。

 

カスタマーサクセスの青本とは

笑顔の女性

カスタマーサクセスの青本とは、米国シリコンバレーに本拠を置くカスタマーサクセス支援のリーディングカンパニー、Gainsight(ゲインサイト)社のCEO、ニック・メータ氏が中心となり、共同著者のダン・スタインマン氏、リンカーン・マーフィー氏とともに執筆した書籍です。

 

原題は『Customer Success: How Innovative Companies Are Reducing Churn and Growing Recurring Revenue』。直訳すると「顧客成功:革新的企業はどのようにチャーンを減らし、リカーリング収益を拡大しているのか」となります。

 

本書は単なるマネジメント書ではなく、SaaSやサブスクリプション型ビジネスの時代において、顧客との関係性をどう築き、維持し、収益拡大に結びつけるかという実践的な方法論を提示しています。

 

とりわけ「チャーン(解約)率をどう抑え、LTV(顧客生涯価値)をいかに最大化するか」というテーマに対し、理論だけでなく戦術レベルにまで踏み込んでいる点が、本書の大きな特長です。

 

筆頭著者のニック・メータ氏は、Gainsightを数年で業界トップクラスのカスタマーサクセスプラットフォームへと成長させた実績を持ち、実務家の視点と経営者の視座を併せ持つ稀有な存在です。

 

共著者のリンカーン・マーフィー氏は、「カスタマーサクセス」という概念が広く知られる以前から、SaaS企業のグロース戦略に携わってきた第一人者としても知られています。彼らの提唱する理論や原則は、世界中のBtoB企業に影響を与え、日本国内でも徐々に認知が進んでいます。

 

さらに本書では、「10の原則」と呼ばれるカスタマーサクセス成功の鍵を体系的に紹介しています。自社の課題やサービス内容、成長フェーズに応じて、これらの原則を実務に取り入れることができます。

 

カスタマーサクセスの青本の対象読者

タブレットを操作する人

カスタマーサクセスの青本は、一定の実務経験や基礎知識を持つ読者を想定した、専門性の高いビジネス書です。

 

特に、SaaSやサブスクリプションモデルを採用するBtoB企業で、すでにカスタマーサクセス部門を立ち上げている、あるいは体制整備に取り組んでいる段階の企業にとっては、実務上の「羅針盤」として機能します。

 

著者たちは、抽象論ではなく、現場で直面する解約防止、アップセル・クロスセルの機会創出、LTVの最大化といった課題に対し、戦術レベルでの対応を徹底的に掘り下げています。そのため、まったくの初心者がいきなり本書を手に取ると、専門用語や理論の深さに圧倒されるかもしれません。

 

このような背景から、本書の主な対象読者として想定されるのは以下のような方々です。

  • カスタマーサクセスマネージャー(CSM)として日々の業務に携わることが多い実務担当者
  • SaaS企業における顧客支援・サポート部門のマネジメント層
  • カスタマーサクセスの思想を取り入れたい経営者や事業責任者
  • カスタマーサクセス職への転職を目指し、業界理解を深めたい求職者
  • 海外動向に関心のあるマーケターや営業企画担当者

ただし、本書を効果的に読み解くためには、「カスタマーサクセスとは何か」「オンボーディングとはどのようなプロセスか」「LTVの概念とその意義」など、基本的な用語と考え方をあらかじめ理解しておく必要があります。基礎知識に不安がある場合は、国内の入門書や、後述する「赤本」などを先に読むことで、より深く内容を吸収できるでしょう。

 

加えて、青本は原書が英語であるため、日本語版であっても一部に直訳調の表現が見られます。そのため、読み慣れていない方にとっては難解に感じる箇所もありますが、骨太な構成と豊富な事例に裏打ちされた内容は、大きな示唆を与えてくれます。

 

たとえば、「顧客の成功とは誰が定義するのか?」という問いに対し、本書では「それを定義するのは会社ではなく、顧客自身である」と明快に示しています。このように、視点の転換を促す場面が随所にあり、業務をなぞるだけでなく、「なぜそれを行うのか」「顧客の価値にどうつながるのか」といった本質的な問いへの向き合いが求められます。

 

青本は、ただ読み流すビジネス書ではありません。自社の状況に照らし合わせ、深く考え、実務に活かすための能動的な読書が求められる一冊です。

 

カスタマーサクセスの青本と赤本の違い!どっちを読むべき?

会議室から外を眺める男性

カスタマーサクセスを体系的に学ぼうとしたとき、多くの人が最初に迷うのが「青本と赤本、どちらから読むべきか」という問いです。

 

この2冊はどちらもカスタマーサクセスに関する書籍ですが、対象読者・内容の深さ・事例の種類が大きく異なるため、それぞれの特性を理解した上で読む順番や使い分けをすると良いでしょう。

 

そもそも赤本とは、『カスタマーサクセスとは何か――日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」』(著:弘子ラザヴィ)という、日本発の実践ガイドブックです。国内SaaS企業での取り組み事例を中心に、より現場目線で「どう実行するか」を詳しく解説しています。

 

青本は「なぜカスタマーサクセスが重要なのか」「顧客の成功とはどう定義すべきか」といった根本的な問いに対する答えを提示する一方で、赤本は「そもそもカスタマーサクセスとは何なのか」「国内で重要な理由は」「KPIは何を見ればいいか」など分かりやすく解説している入門書です。

 

たとえば、これからCS部門を立ち上げようとしている企業の担当者が、青本から読み始めた場合、「理想はわかるけど、自分たちにはまだ遠い」と感じてしまうことがあるかもしれません。その場合は、赤本を先に読むことで「まず何から着手すべきか」を具体的にイメージできるようになります。

 

逆に、赤本だけを読んで終わってしまうと、「なぜそれが必要なのか」「顧客の成功の定義は誰が決めるべきなのか」といった本質的な問いに向き合う機会が減ってしまう可能性もあります。カスタマーサクセス施策は表面的なKPI管理やマニュアル対応だけでは不十分であり、根底にある思想と原則への理解がなければ、持続的な成長にはつながりません。

 

まったくの初学者であればまず赤本で全体像と実務感覚をつかみ、そのうえで青本を読むことで「なぜこの施策が必要なのか」を理論的に理解していく、というステップがおすすめです。

 

なお、転職希望者やカスタマーサクセスマネージャーを目指す方であれば、青本を通して「自分ならこの原則をどう実行するか」という視点を持っておくことが、面接での説得力ある発言や自身の戦略設計力を示す上でも強みになります。

 

結論としては、赤本は「What(何を)・How(どうやるか)」を学ぶ書であり、青本は「Why(なぜやるか)」を深掘りする書です。どちらか一方だけでなく、両者を補完的に読むことで、より本質的で持続可能なカスタマーサクセス戦略を描けるようになるでしょう。

 

カスタマーサクセスの青本で学べる10の原則

ビジネスミーティング

本書の中核ともいえるのが、「10の原則」です。これはSaaSやサブスクリプションビジネスを成功に導くための本質的な行動指針を体系化したものであり、本書のハイライトの一つといえるでしょう。

 

これらの原則は、業界の最前線で活躍する10名の専門家の知見をもとに構成されており、カスタマーサクセスを企業戦略として機能させるための骨格を提示しています。どの原則も一読すればその重要性を実感できる内容ですが、実務に落とし込むには、自社のフェーズや顧客構造を踏まえた解釈と応用が欠かせません。

 

以下に、「10の原則」の一覧を示します。

 

原則番号

原則タイトル

原則1

正しい顧客に販売しよう

原則2

顧客とベンダーは何もしなければ離れる

原則3

顧客が期待しているのは大成功だ

原則4

絶えずカスタマーヘルスを把握・管理する

原則5

ロイヤルティの構築に、もう個人間の関係はいらない

原則6

本当に拡張可能な差別化要因は製品だけだ

原則7

タイムトゥバリューの向上にとことん取り組もう

原則8

顧客の指標を深く理解する

原則9

ハードデータの指標でカスタマーサクセスを進める

原則10

トップダウンかつ全社レベルで取り組む

 

これらの原則を通じて、青本はカスタマーサクセスを単なる業務ではなく、企業成長の根幹に位置づけるべき戦略的活動として再定義しています。重要なのは、読むことそのものではなく、自社の状況に照らし合わせて考え、実践に結びつけることです。

 

カスタマーサクセスの青本を有益に読むポイント

コーヒーを飲みながら勉強する女性

カスタマーサクセスの青本は、読み終えた瞬間に明確な答えが得られるタイプの書籍ではありません。むしろ、読後にどのように活用するかが最も重要です。ただページをめくるだけでは知識として定着せず、実務に変化をもたらすこともできません。ここでは、青本を最大限に活かすための読み方のポイントを紹介します。

 

まず意識したいのは、自社の顧客や組織の状況に照らし合わせながら読み進めるという姿勢です。たとえば、第8原則「顧客の指標を深く理解する」を読んだ際には、「自社の顧客はどのKPIを重視しているか?」「それを我々は本当に理解できているのか?」といった問いを立てることで、内容が自分事として浸透していきます。

 

また、転職を目指す方にとっても、青本は強力な武器となります。各原則について、「これまでの自分の経験とどのように重なるか」「今後どう実践できるか」を整理しておくことで、面接で具体性と説得力のある回答が可能になります。ただ内容を知っているだけでなく、自分の言葉で理解・言語化できていることが、評価につながります。

 

青本は、実務への応用、マインドセットの再構築、課題解決のヒントとして読み解くべき一冊です。受け身で読むのではなく、積極的に問いを持ち込みながら読み進めることで、青本の価値は大きく高まります。

 

カスタマーサクセス青本のリアルなレビュー

パソコン操作をする男性

カスタマーサクセスの青本は、理論や原則だけでなく、実務に役立つ視点を与えてくれる書籍として、多くの読者から支持されています。特に、すでにカスタマーサクセスの業務に携わっている方や、これからこの分野に踏み出そうとする方々からは、「考え方が整理できた」「自社の課題に対するヒントが得られた」といった前向きな声が多数寄せられています。

 

以下に、Amazonなどのレビューから抜粋した実際の読者の声を紹介します。

 

「日本ではまだ馴染みの薄いカスタマーサクセスについて理解を深めるのに役立つ一冊で、特に未導入の企業には一読を勧めたい内容です。Salesforce創業者マーク・ベニオフが提唱したカスタマーサクセスという概念や、クラウド以前(BC)と以後(AC)のビジネスの違いが丁寧に解説されています。顧客の成功こそが自社の利益につながる、という視点がよく伝わってきます。

 

全10原則は、それぞれ異なる著者が執筆しているため視点がバラバラでやや読みづらい面もありますが、巻末の補足説明が補っています。索引が不十分だったり、訳語の説明が不足していたりと翻訳面では読みにくさがあるのが難点です。」

 

「本書は、カスタマーサクセスを成功させるための10の原則について詳しく解説しています。定期的に読み返すことで、自社の課題や改善点を見つけやすくなる構成です。

 

特に参考になったのは、『顧客は放っておくと離れていく』という原則。全ての顧客に平等な対応をするのは現実的ではないため、セグメントごとにタッチモデル(接触頻度・手法)を設計する重要性が強調されています。

 

適切なタッチモデルがなければ、顧客の離脱を招くだけでなく、担当者の負担も増えるため、戦略的な対応が欠かせません。今後も繰り返し活用したい一冊です。」

 

筆者自身も本書を通じて、単なる知識の獲得を超え、カスタマーサクセスの本質について考える契機を得ました。印象的だったのは、顧客の成功を企業視点で定義するのではなく、あくまで顧客自身の視点から定義し、その実現を支援するという姿勢です。

 

たとえば、「アップセル=成功」と捉えがちですが、顧客が求めている成果に寄り添えていない場合、それは単なる押し売りに過ぎません。

 

さらに、本書はカスタマーサクセスを部門単位の施策ではなく、全社的に支えるべき戦略的機能として位置づけており、経営層や事業責任者にもぜひ手に取ってほしい内容となっています。

 

一方で、「内容が抽象的で、初学者にはやや難解」との指摘もあります。その点については前述の通り、赤本などで基礎を固めたうえで青本に進むことで、理解が格段に深まるでしょう。

 

青本は、読むタイミングと姿勢を誤らなければ、マインドセットと実践知の双方を養える稀有な一冊です。How-toにとどまらず、深い納得をもたらしてくれる内容が詰まっています。

 

青本はカスタマーサクセスのバイブル的存在!

カスタマーサクセスという言葉が国内で広く使われるようになって以来、数多くの書籍やセミナー、オンライン講座が登場してきました。しかし、その中にあって青本は、流行やトレンドに左右されることなく、普遍的な原則と戦略的な視点を提供し続けるバイブルとして、今なお高い存在感を放っています。

 

本書には、顧客を支援すべき相手ではなく、共に成果を創るパートナーとして捉える思想が一貫して流れています。紹介されている10の原則も、目新しいテクニックではなく、顧客との向き合い方そのものを問い直す内容となっています。

 

だからこそ本書は、特定の役職やキャリアステージに関係なく、あらゆるビジネスパーソンに示唆を与える一冊です。実務への応用にとどまらず、マインドセットそのものに働きかけるという点で、青本は今後も長く読み継がれていくでしょう。

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