2025/04/21投稿者:9Eキャリアカスタマーサクセス編集部

カスタマーサクセスとはどんな部署? 組織モデルや立ち上げる手順、仕事の流れを解説

カスタマーサクセスは顧客の成功をサポートする役割を持つ部署です。近年カスタマーサクセス部署を独立して立ち上げる企業も増加しています。自社でもカスタマーサクセス部門の立ち上げを検討しているものの「カスタマーサクセスの具体的な仕事内容や業務、役割が分からない」「カスタマーサクセスを組織として立ち上げる手順が知りたい」といった悩みを持つ方もいるかもしれません。また、これからカスタマーサクセスの分野へ転職する方のなかにも、こういった知識へのニーズがあることでしょう。

 

本記事では、カスタマーサクセスの部署としての役割や、組織の立ち上げ手順を解説します。立ち上げを成功させるポイントも解説していますので、ぜひ参考にしてください。

 

カスタマーサクセスとは顧客を成功へ導く役割を持つ部署

successの文字

カスタマーサクセスの持つ主な目的や役割、ミッションを解説します。

 

カスタマーサクセスの役割

カスタマーサクセスとは、顧客の課題解決のために自社の製品やサービスを最大限に活用してもらえるようサポートを提供し、ビジネス成功を実現できるように能動的に支援する活動、または活動に取り組むことを指します。

 

カスタマーサクセスでは、最初は担当者が顧客へ伴走しながら課題解決へのフォローを行いますが、最終的には顧客が自走によって課題解決できるように導きます。

 

カスタマーサクセスの目的

カスタマーサクセスの目的は、LTV(顧客生涯価値)の向上です。そのためにサービスの解約率低減や、適したタイミングでのアップセル・クロスセルによる顧客単価増をミッションとしています。

 

カスタマーサクセスの1日の仕事の流れや業務内容、機能

スケジュール帳とペン

カスタマーサクセスの1日の仕事の流れや具体的な業務内容、部署として発揮している機能を解説します。

 

カスタマーサクセスの、とある1日の仕事の流れ

実際のカスタマーサクセス部署の働き方や時間は、企業によって異なります。以下はあくまで一例ですが、カスタマーサクセスの1日の仕事の流れをまとめました。

 

9:00〜 出社。朝礼で今日のタスク確認

9:15〜 顧客からの商材の使い方、運用方法といった問い合わせへ対応

11:00〜 利用企業との打ち合わせ、使い方の説明や、運用方法の提案など

12:00〜 CSチームのミーティング、オンボーディング状況の共有や今後の施策の話し合い

13:00〜 ランチ休憩

14:00〜 利用企業との打ち合わせ

15:00〜  問い合わせ対応

16:00〜 利用率向上のためのメール作成と送信

18:00〜 退社

 

カスタマーサクセスの業務内容

カスタマーサクセスは、顧客の課題解決と成功に貢献するために、以下の業務を主に行っています。

・オンボーディング

・アダプション

・エクスパンション

・プロダクトへのフィードバック

 

オンボーディングとは、顧客が商材を購入した直後、自社に導入していくフェーズです。導入直後のため、商材が定着しないと解約される可能性があります。カスタマーサクセスは、顧客が自社商材へ持つ熱量が高いうちに、サービスの活用方法を理解するためのオンボーディングプロセスの支援を提供します。

 

まずキックオフミーティングで自社商材を利用して目指すゴール、ゴール到達のための課題を相互で認識します。課題を整理し、導入と定着のためのステップとスケジュールを作成したら、それに沿って導入を進めていきます。

 

アダプションとは、オンボーディング後に本格的に商材の運用と活用を図り、顧客企業への定着を図るフェーズです。アダプションでは、自社商材の活用度合いをヒアリングまたはモニタリングし、必要に応じた適切な提案やフォローを行います。

 

アダプションでは、商材の活用率が低下している場合に解約リスクのある顧客へ解約阻止のためのフォローをおこなったり、活用率を高めることでアップセルやクロスセルの提案につなげたりすることが目的です。カスタマーサクセスは顧客と継続的に接点を持つことで、解約リスクの低減に努めます。

 

エクスパンションとは、顧客の自社商材の活用拡大を図るフェーズです。現状のプランの契約更新や、アップセルやクロスセルによる顧客単価の向上などをカスタマーサクセスが提案します。

 

たとえばSaaSなどのサブスクリプション型サービスでは、安価なプランから契約をスタートし、顧客の活用度合を高めていく過程で上位の高価なプランへの移行や機能の追加、利用範囲の拡大などのアプローチを行うことが、エクスパンションフェーズにあたります。

 

LTVの向上というカスタマーサクセスの目的を達成するためには、売上や利益を維持・拡大するエクスパンションのプロセスが非常に重要と言えるでしょう。

 

プロダクトへのフィードバックは、自社製品やサービスを活用している顧客からの意見や声を取り入れ、製品やサービスの機能追加や機能改善を図ることです。カスタマーサクセスは顧客の課題解決やビジネスの成功へ貢献するための活動を行っていますが、自社商材の価値を最大化するための役割も担っています。

 

顧客と継続的に接点を持っているカスタマーサクセスは、顧客からの生の声や意見、反応なども入手できます。これらを製品やサービスへのフィードバックとして取り入れることで、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。

 

カスタマーサクセスの持つ機能

カスタマーサクセスが部署として機能するのに欠かせないのが、以下7つの機能です。

 

・リーダー:組織を主導する責任者。経営者とのやり取りも行う

・アカウントマネジメント:顧客の現状へ最適な戦略の立案や、目標達成に向けたプロセスや売上管理を行う

・カスタマーコミュニケーション:関連サービスや契約更新の提案を顧客へ行う

・カスタマーサポート:顧客が抱える疑問や悩みを解決する

・カスタマートレーニング:オンボーディングをはじめ顧客が商材を活用するための支援を行う

・プロダクトフィードバック:データ分析による顧客情報や業界のトレンドをもとに商品を改善する

・カスタマーサクセスオペレーション:カスタマーサクセスマネージャーや各部門の責任者のサポートを行う

 

カスタマーサクセスの組織図モデル5つの型を解説

設計図の数々

カスタマーサクセスの部署を立ち上げる際に、参考となるのが組織図モデルです。カスタマーサクセスの代表的な5モデルを、それぞれの違いや特徴を踏まえつつ解説します。

 

オールラウンダー型

オールラウンダー型とは、カスタマーサクセス部署がセールスからオンボーディング、サポート、リテンション・アップセル・クロスセルまでの対応を行うモデル図です。おもにカスタマーサクセス部署を立ち上げたばかり、または事業規模の小さいスタートアップ企業などで採用されています。

 

オールラウンダー型は、事業の中心にカスタマーサクセスを据えることで、顧客の解約率(チャーンレート)の大幅な低下が期待できるメリットがあります。ただし、カスタマーサクセスの業務負担範囲が広く、負担が大きくなるのがデメリットです。

 

顧客基盤が拡大すればカスタマーサクセス部門の負担が大きくなるため、適切に顧客対応を行うためには人材リソースを補充するか、他の組織図モデルへの移行が求められます。

 

スペシャリスト型

スペシャリスト型とは、カスタマーサクセス部門内に、以下のような専門チームを構築するモデル図です。

・オンボーディングチーム

・テックタッチチーム

・セールスチーム など

 

各チームが自身の業務に注力できるため、各メンバーの業務負担を軽減しつつ顧客に最適な支援を提供しやすいのがメリットです。ただし、チーム間で連携がうまく取れていないと顧客対応への遅れが生じ、解約率が上がってしまう可能性があります。専門チームを構築するための、十分な数のカスタマーサクセス人員の確保も必要です。

 

セールス指向型

セールス指向型とは、カスタマーサクセスと営業部門が密に連携を取りつつ、業務を進める組織図モデルです。自社に適合した顧客への商材販売や、最適なタイミングでのアップセルやクロスセルの提案などを可能とします。

 

おもに取扱商材の数が少ない、あるいは単純に企業・顧客数の少ないビジネスに採用されるモデル図です。

 

なおこのセールス指向型と似ているものの、カスタマーサクセスが営業の一部業務を担当するモデル図については、プリセールス型と呼ばれています。

 

パートナーシップ型

パートナーシップ型とは、カスタマーサクセスが顧客に伴走して支援する組織図モデルです。コンシェルジュ型とも呼ばれます。

 

カスタマーサクセスが伴走することで、顧客の課題を先回りして解決できるメリットがあります。常に顧客の状態を正確に把握できることから、アップセルやクロスセルの提案も成功しやすいです。

 

パートナーシップ型は、顧客数は少ない一方で1社当たりの顧客単価が高めと見込まれる、ハイタッチ層が多い企業にこそ向いています。パートナーシップ型の組織図にする以外にも、スペシャリスト型のカスタマーサクセス部門内にパートナーシップ型の役割を果たすハイタッチ専用チームを設置する方法もあります。

 

エリア別型

エリア別型とは、カスタマーサクセスチームを顧客の地域に合わせて構築するモデル図のことです。たとえば北海道と大阪に顧客がいれば、北海道のカスタマーサクセスチームと大阪のカスタマーサクセスチームを構築することになります。

 

エリア別のチームのほかに、全地域の顧客を対象にフォローやアプローチを行うテックタッチやイネーブルメントなどのチームも構築します。

 

エリア別型のカスタマーサクセスチームは、事業規模が大きく全国各地に多くの顧客を抱える企業でおもに採用されているモデル図です。なお、エリア別のほか、顧客規模ごとにチームを作る組織図もあります。

 

カスタマーサクセスが必要とされている背景

PCのデスクトップ画面

新規の部署や部門としてカスタマーサクセスの立ち上げを検討する企業が増加している背景には、そもそも現在のビジネスモデルにカスタマーサクセスが必要とされているということがあります。カスタマーサクセスが多くの企業で必要・重要視されている背景を解説します。

 

サブスクリプションビジネスの拡大

カスタマーサクセスが必要とされる背景にある大きな要因が、サブスクリプション型のビジネスモデルの拡大です。従来の売り切り型の商材は顧客が購入、契約した時点で利益が発生しますが、サブスクリプション型のサービスは、顧客に継続的に利用してもらうことで利益が得られます。そこでカスタマーサクセスにより、顧客への積極的なアプローチやフォローを行うことで解約を阻止し、継続契約やアップセル・クロスセルによる顧客単価向上を図る必要があります。

 

競合企業との競争激化

近年ではインターネットやSNSが普及したことで、顧客側も商材の契約や購入前に商品やサービスの情報を手軽に収集できるようになりました。そのため競合との競争が激化し、自社のみが持つ付加価値がなければ、競合企業に勝つことができません。

 

商品やサービス以外の部分でも差別化を図る取り組みとして、顧客の成功のためにサポートやフォローを提供するカスタマーサクセスを立ち上げる企業が増えています。

 

LTVの向上

サブスクリプションモデルの商材では、顧客に継続利用を促すことでLTVを向上させ、企業の利益としています。一方で、サブスクリプション以外のサービスを提供する企業の経営においても、LTVの向上が重要視されるようになりました。

 

幅広い分野の企業で、LTVの向上を目的に顧客のニーズや課題に個別に対応し、継続的に信頼関係を構築できるカスタマーサクセスが導入されはじめています。

 

カスタマーサクセスの組織立ち上げ手順

to doの紙とペン

カスタマーサクセスの組織立ち上げ手順は以下の通りです。

  1. 目的と目標を明確にする
  2. 顧客理解を深める
  3. リソースを適切に配置する
  4. 顧客のサービス利用状況を把握する
  5. KPIを設定する
  6. ツールの選定と導入

それぞれの手順を順に紹介します。

 

目的と目標を明確にする

まずカスタマーサクセス組織を構築する目的と目標を明確に設定します。目的と目標が定まっていないと、講じる施策の方向性が分からない、評価する指標が分からず評価ができない、といった問題が生じます。

 

カスタマーサクセスの最終的な目標は、顧客の成功とLTVの向上です。そのため、顧客の成功を実現しつつ自社の利益にもつながる目標設定をしましょう。たとえば、「顧客満足度の向上」「アップセル・クロスセルの増加」「離脱防止」などがあります。

 

顧客理解を深める

顧客理解を深めることで、状況に合わせた適切なフォローやアプローチができるようになります。顧客理解を深めるためには、カスタマージャーニーマップの作成が有効です。

 

カスタマーサクセスでのカスタマージャーニーマップは、顧客が商材を認知し、購入するまでに加えて、契約後のアップセルやクロスセル、解約に至るまでの道筋も記載します。契約だけでなく、エクスパンションや解約防止のための施策も必要になるためです。

 

リソースを適切に配置する

ツール、人員といったリソースを以下のタッチモデルに合わせて適切に配置します。

・ハイタッチ:サポートの優先度が高い顧客

・ロータッチ:収益の維持に欠かせない顧客

・テックタッチ:サポートの優先度が低い顧客 

 

カスタマ―サクセスを立ち上げた直後は、顧客一人ひとりに向き合う必要があるため、ハイタッチでの対応を取る企業も多いでしょう。対応する顧客数が増えてきたら、顧客を分類し、タッチモデルに応じてツールや人員を配分することで限られたリソースでカスタマーサクセスの業務を効率よく進められるようになります。

 

顧客のサービス利用状況を把握するヘルススコアを設ける

顧客を理解し、対応の施策や方向性が定まったら、施策の効果を測定するための指標として「ヘルススコア」を設けます。

 

ヘルススコアは、顧客が自社の商材を継続利用しているかを表した数値です。たとえば商材がツールの場合は、ログイン回数や機能の使用頻度などがヘルススコアを算出する要素になります。ヘルススコアは高ければ高いほど、解約される可能性が低くなります。

 

ヘルススコアによって解約しそうな顧客の洗い出しができるため、設定しておきましょう。

 

KPIを設定する

カスタマーサクセスの効果を測定するために、ヘルススコア以外の指標をKPIとして設定します。設定するKPIはカスタマーサクセスの方向性や活動内容によって異なります。

 

たとえばカスタマーサクセスでの活動指標として設定するKPIには「オンボーディング完了率」「CSQL」「アクティブユーザー数」「セッション時間」などがあります。

 

ツールの選定と導入

カスタマーサクセスの業務効率化に欠かせないのが、カスタマーサクセスツールです。ツールにはさまざまなものがあり、顧客データを集約できるもの、テックタッチ用などがあります。カスタマーサクセス業務で効率化したいもの、重視したいものに合わせてツールを選定しましょう。

 

カスタマーサクセスの組織立ち上げを成功させるポイント

グータッチする人々

カスタマーサクセスの組織立ち上げを成功させるために、覚えておきたいポイントを解説します。

 

単一チームで動くようにする

自社の企業規模そのものが小さい場合でも、できるだけ早い段階からカスタマーサクセスの単一チームを構築しておくことをおすすめします。独立したカスタマーサクセス部門を組織として構築することで、社内にカスタマーサクセス文化が根づきやすくなります。

 

まずはスモールスタートで組織を立ち上げ、顧客の基盤が拡大するにしたがってカスタマーサクセスの規模を増やしていきましょう。

 

タッチモデル別に予算を最適化する

タッチモデルごとに予算を最適化しましょう。優良顧客が属するハイタッチは、個別のセミナーなどを用いて伴走形式で支援することも多いため多くの予算を設定します。一方でテックタッチ層はダウンロード資料、FAQやナレッジベース、動画マニュアル、事例紹介など自動化できる支援を取り入れ、かける予算は少なめにしましょう。

 

顧客セグメント別に組織を構築する

カスタマーサクセスの組織図に正解はありません。たとえば、エンゲージメントや契約規模・形態、商材別や地域別などでカスタマーサクセスチームを作るのもおすすめです。自社のステージや顧客などに適した組織を構築しましょう。

 

他部署との足並みをそろえる

顧客の成功を実現するには、製造開発やマーケティングといった他部署との連携が必須です。まずはトップダウンでカスタマーサクセスの重要性と必要性を説くなど、カスタマーサクセスと他部門が円滑に連携できるための工夫が必要です。

 

部署同士が連携することで、たとえばマーケティング部門は顧客解像度を高めたうえでの施策展開ができ、製品開発は顧客フィードバックを迅速に反映できる、といったように、企業全体でカスタマーサクセスの取り組みを効率的に実現できます。

 

会社を上げて取り組む

KPIを設定後、会社全体でカスタマ―サクセスに取り組みましょう。経営陣がリードすれば、「顧客の成功=自社の利益」という構造が浸透し、カスタマーサクセス組織の意義や重要性をチームに根付かせられます。

 

カスタマーサクセスの部署や組織の役割を把握しよう

カスタマーサクセスの部署としての目的や役割、組織構築の手順や成功させるポイントを解説しました。カスタマーサクセスはサブスクリプション型のサービスを展開する企業だけでなく、幅広い分野や業種の企業で重要視されている部署です。自社の商材や活動内容に応じた組織を構築し、LTVの向上につなげましょう。

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