2024年12月5日公開
最終更新日:2024年12月5日
投稿者:9Eキャリアカスタマーサクセス編集部

カスタマーサクセスがSaaSで必要とされる理由とは?役割や業務内容、必要なスキルを解説

既存顧客へのサポートによる利益拡大を目指し、カスタマーサクセスを設置する企業が増えています。カスタマーサクセスとは、自社製品・サービスの活用を通じて顧客の目標達成を支援する活動および職種です。中でも、SaaS業界はカスタマーサクセスの需要が高まっています。

 

この記事では、カスタマーサクセスがSaaSで必要とされる理由を詳しく解説します。

 

▼カスタマーサクセスの概念、基本的な考え方や活動内容についてはこちらの記事で総合的に解説しています。

カスタマーサクセス(CS)とはどのような意味? 職種としてのCSについても必要な知識を具体的に解説

 

SaaSにおけるカスタマーサクセスの定義

英字辞書の画像

SaaS(​​Software as a Service)のカスタマーサクセスとは、SaaSビジネスにおいて顧客へ能動的に支援する取り組みです。または職種や部門を意味します。そもそもSaaSとはクラウドサービスの一種であり、インターネットを介してユーザーにソフトウェアを提供する仕組みです。顧客との契約形態は、月額料金制などのサブスクリプションモデルを採用している企業が多く見られます。SaaSおよびサブスクリプションビジネスは、顧客の継続利用によって安定した収益を得られる事業形態です。顧客のサービス定着を目的として、SaaS業界ではカスタマーサクセスを設置する企業が増えています。

 

カスタマーサクセスがSaaSビジネスで必要とされる理由

customerと書かれた球体を挟んで立つ2人の人物

SaaSビジネスでカスタマーサクセスの必要性が高まっていますが、具体的にどのような理由があるのでしょうか。主な理由を3つに分けて解説します。

 

1.クラウドサービスとサブスクリプションモデルの普及

インターネットの普及により、BtoC・BtoBビジネスの双方ともにクラウドサービスとサブスクリプションモデルの利用が広がっています。SaaSを含むクラウドサービスは従来の買い切り型ではなく、料金を支払った期間だけサービスを利用できるサブスクリプションモデルが主流です。買い切り型製品と比べると、クラウドサービスおよびサブスクリプションモデルは導入や解約が容易です。法人向けサービスであっても解約のハードルが低いことから、解約を防ぐための取り組みとしてカスタマーサクセスに注目が集まっています。

 

2.顧客体験(CX)と顧客成果(CO)の重要性

自社サービスを継続利用してもらうためには、顧客体験(CX)と顧客成果(CO)の向上が重要です。顧客体験は、ユーザーが自社サービスを認知してから利用後のアフターフォローを受けるまで一連の体験を指します。カスタマーサクセスにより丁寧なサポートを提供することで、顧客体験の向上が期待できます。一方の顧客体験とは、ユーザーが自社サービスを利用した結果、得られる利益です。カスタマーサクセスではユーザーごとの顧客成果を正しく設定し、目標達成に向けて支援します。カスタマーサクセスが顧客体験・成果の向上に取り組むことで自社サービスの付加価値が増し、サービスの継続利用につながります。

 

3.競合他社との差別化

自社サービスと競合他社の差別化には、カスタマーサクセスの拡充が求められます。現代はあらゆる業界に数多くのSaaSビジネスが存在しており、単なる価格や性能のみで優位に立つのは困難です。差別化のためには、顧客ロイヤルティの底上げが必須となります。顧客ロイヤルティとは、ユーザーが自社サービスに感じる愛着や信頼感の高さです。顧客ロイヤルティが高いユーザーは、ロイヤルカスタマーと呼ばれます。ロイヤルカスタマーは一般ユーザーより他社サービスへ乗り換えるリスクが低く、長期間にわたって自社サービスを利用してくれます。ロイヤルカスタマーを増やすためには、カスタマーサクセスによる手厚いフォローが不可欠です。

 

SaaSのカスタマーサクセスが担う役割

会議中の風景

SaaSビジネスにおけるカスタマーサクセスは、さまざまな役割があります。代表的な4つの役割を見ていきましょう。

 

1.解約率(チャーンレート)を抑える

解約率(チャーンレート)とは、一定期間内の顧客全体のうち、どれくらい解約されたかを示す割合です。「1:5の法則」というマーケティングの考え方では、既存顧客への対応コストよりも新規顧客の獲得コストのほうが5倍大きいとされています。解約率が高くなれば、新規顧客の獲得に多大なリソースを割かなくてはいけません。サブスクリプションモデルのSaaSビジネスは解約しやすいため、他の事業と比較して既存顧客の維持が極めて重要になります。解約率を下げるには顧客へのきめ細やかな支援が有効なため、SaaSビジネスにカスタマーサクセスは欠かせない存在となっています。

 

2.顧客生涯価値(LTV)を上げる

顧客生涯価値(LTV:Life Time Value)とは、1人のユーザーから得られる総利益を意味します。顧客生涯価値を伸ばすためには、1人のユーザーにできる限り長くサービスを使いづけてもらうことが必要です。カスタマーサクセスは、サービス導入から活用まで幅広い場面でユーザーを支援します。使い方がわからない人や利用頻度が低い人をフォローすることで、サービスの利用を定着させて解約を防ぎます。フォローを通じて信頼関係も構築できるため、長期間の利用による顧客生涯価値の向上へつながります。

 

3.新規顧客の獲得につなげる

カスタマーサクセスで顧客満足度を高めると、NPS(Net Promoter Score:推奨度)の上昇による新規顧客の獲得が見込めます。NPSとは、ユーザーの顧客ロイヤルティを計測する指標の1つです。「サービスを知人に紹介したいと思うか」を0から10のスコアで評価してもらい、回答者全体のスコアの割合を算出します。NPSが高いユーザーは良い評価や自身の成功事例を口コミで広げてくれるため、自社サービスの認知度が上がり新規顧客へアプローチできます。

 

4.サービスの改善や企画を行う

カスタマーサクセスの役割には、サービスの改善や企画も含まれます。通常、サービスの開発部門はユーザーと直接関わる機会がありません。一方のカスタマーサクセスは、サービスを利用中の顧客と密接に関わる立場です。ユーザー目線の不満や要望を収集しやすいため、サービスの改善・企画に役立つフィードバックを行えます。適切なフィードバックによりサービスの利便性を上げることで、ユーザーの解約防止にも貢献できるでしょう。

 

SaaSのカスタマーサクセスの業務内容

Supportと印字された大きなボタン

SaaSビジネスのカスタマーサクセスは、顧客とやり取りする多くの業務を担当しています。ここでは、4つの業務を紹介します。

 

1.オンボーディング(導入支援)

オンボーディングとは、サービス導入初期の支援全般を指します。操作方法や画面の見方、機能の説明など、サービスの基本的な使い方をレクチャーします。オンボーディングをスムーズに完了させるためには、操作デモやガイダンス、ウェルカムメッセージの作成が必要です。SaaSは容易に解約できるため、サービスの導入直後から機能を上手く使いこなせなければ顧客は早々に契約を打ち切ってしまいます。初期段階から顧客をサポートしてサービスのメリットを体感してもらうことで、契約初期の解約を回避できます。

 

2.定着・活用支援

オンボーディングにより基本の使い方を習得した顧客には、定着・活用支援を実施します。顧客が自社サービスを導入した目的を達成するため、適切に顧客成果を設定してサポートしていきます。たとえば、高度な機能のトレーニングや、セミナー・ワークショップによる勉強会の開催といった施策を行いましょう。また、ユーザーコミュニティを制作・運営するケースもあります。顧客同士が自発的にオンライン上で交流できるため、ノウハウの共有や顧客ロイヤルティの向上に役立ちます。

 

3.ユーザーの情報収集・フォロー

ユーザーの情報収集とフォローも、カスタマーサクセスの業務の1つです。問い合わせ対応やアンケートの実施に加えて、「ヘルススコア」をモニタリングして顧客ごとの利用状況を観測します。ヘルススコアとは、サービスのログイン回数・頻度や機能の活用状況、イベントへの参加回数といった数値を可視化する指標です。ヘルススコアが低い顧客は解約のリスクが高いため、優先的にコミュニケーションを取ってフォローします。そのほか、契約更新時のサポートもカスタマーサクセスが担当します。

 

4.アップセル・クロスセルの促進

カスタマーサクセスの業務は既存顧客の利用継続だけでなく、顧客単価のアップに向けた取り組みも行います。顧客単価を高めるための活動として、「アップセル」や「クロスセル」の提案があります。アップセルとは契約プランをグレードアップすることです。クロスセルは、現行の契約プランに加えてオプションや関連サービスを追加契約することです。アップセル・クロスセルを成功させるには、顧客のニーズや課題に適した機能・プランの提案が大切になります。

 

SaaSのカスタマーサクセスとして成功するコツ

樹木を背景に握手する手元

SaaSのカスタマーサクセスとして成功するには、次の4つのポイントに着目しよう。

 

1.カスタマーサクセスの役割を理解する

カスタマーサクセスの役割は、顧客の成功体験の創出です。顧客のビジネス上の成功を実現することで、解約率の低下や顧客生涯価値の向上といった自社の利益拡大につながります。カスタマーサクセスの役割を履き違えると、自社の利益拡大にばかり意識が向いてしまうかもしれません。単純に顧客単価を上げることに固執してしまい、アップセル・クロスセルのむやみな押し売りをするおそれがあります。顧客体験を損ねて信用を失えば、かえって解約率が増加しかねません。カスタマーサクセスの役割は顧客の成功にあると念頭に置き、顧客ファーストな対応を心がけましょう。

 

2.顧客のセグメントや状況に応じてフォローする

カスタマーサクセスは顧客と深く関わりますが、顧客のセグメントや状況に応じて対応内容を変えましょう。顧客のセグメントは、以下の3種類に分けられます。

 

セグメント

対象

対応体制

対応内容の例

ハイタッチ

単価が高い大口顧客

1対1

個別訪問や電話によるサポート

機能のカスタマイズ

ロータッチ

中間層の顧客

1対複数

電話やメールによるサポート

セミナーなどのイベント開催

テックタッチ

単価が低くもっとも人数が多い顧客層

1対複数

FAQ・チャットボット・メール・動画など、デジタルツールのみで対応

 

注意点として、顧客のセグメントでおおまかな対応方針を決めても、ときには対応内容の変更が必要です。たとえば大口顧客であっても、個別訪問は迷惑に感じてメールでの対応を望む人も存在します。要望やニーズ、課題など、顧客ごとに最適な方法と頻度でのフォローに留意しましょう。

 

3.関連部門と連携する

SaaSのカスタマーサクセスとして成功するには、関連部門との連携が必要です。営業やインサイドセールス、マーケティング、開発など、多くの部門と積極的に関わりましょう。顧客と深く関わる営業やインサイドセールス部門と連携すれば、顧客の詳細なデータを共有できます。マーケティング部門は新規顧客にアプローチするため、どのような層をターゲットとしているのかを理解できます。開発部門には顧客から直接得た意見をフィードバックすれば、サービスの効果的な改善が可能です。各部門と協力することで、カスタマーサクセスの精度を高められます。

 

4.能動的に顧客とコミュニケーションを取る

カスタマーサクセスは、自ら顧客に働きかけることが大切です。混同されがちですが、カスタマーサクセスは「カスタマーサポート」とは大きく異なります。カスタマーサポートは、あくまで顧客からの問い合わせに対応する役割です。受動的な立場であるため、カスタマーサポートから顧客へ接触する機会はありません。一方、カスタマーサクセスは能動的に行動する立場です。顧客からの問い合わせを待たず、積極的にアプローチする必要があります。サービスを使いこなすためのサポートを提供し、顧客の課題に合う活用方法や機能面のアップグレードを適切なタイミングで提案しましょう。

 

SaaSのカスタマーサクセスに必要なスキルや経験

NEW SKILLSと書かれた標識

SaaSのカスタマーサクセスになるためには、特定の資格が必要なわけではありません。これまでの仕事で培ったスキルや経験が重視されます。SaaSのカスタマーサクセスに必要な5つのスキルや経験を解説します。

 

1.ヒアリング力・分析力

SaaSのカスタマーサクセスは、高度なヒアリング力と分析力が求められます。多くの顧客は、自分の悩みを具体的に言語化できているわけではありません。ただ単に顧客の話を聞くのではなく、こちらから質問してできる限り意見を引き出す必要があります。聞き取った顧客の意見から、「どういった課題があるのか」「なにを求めているのか」を分析し解決策を生み出す論理的思考力も欠かせません。

 

2.ファシリテーション能力

ファシリテーション能力とは、ミーティングなどの話し合いを円滑に進めて合意形成をするスキルです。カスタマーサクセスはチームで会議をしたり、社内の他部門と連携したりする機会が多くあります。カスタマーサクセスが参加者から主体的な意見を取り上げ、意見の衝突をコントロールすることで新たな施策をスムーズに立案できます。

 

3.探究心

SaaSのカスタマーサクセスにとって、強い探究心は不可欠です。顧客への的確なサポートや新たなプランの提案には、自社サービスの深い知識が必須になります。また、買い切り型製品と比べると、SaaSビジネスは新たに機能が追加されるスピードが早いです。継続的に学習する姿勢が求められるため、探究心が低い人には向いていないでしょう。加えて、顧客のニーズや課題を正しく理解するためには、幅広い業界のトレンドや商習慣の違い、最新技術を学ぶ必要があります。

 

4.営業やコンサルティングの経験

営業活動やコンサルティングの経験があると、SaaSのカスタマーサクセスとして活躍しやすいでしょう。どちらも顧客と頻繁にコミュニケーションを取る立場であり、さまざまな計画やプランを提案します。さらに、営業はカスタマーサポートと業務領域が近く、営業活動で培った提案力やコミュニケーション能力をそのまま業務に活用できます。コンサルタントも同様に高い提案力や分析力があるため、カスタマーサクセスとしての活躍が期待できるでしょう。

 

5.SaaS業界の経験

SaaSのカスタマーサクセスとして活躍するためには、SaaS業界の経験があればなお良いでしょう。自社サービスの仕様を技術的な側面から理解できるため、システムの使い方や活用方法に悩む顧客に対してもわかりやすい説明が可能です。また、SaaS業界の経験がある人は、SaaSビジネスの根幹となる既存顧客や顧客ロイヤルティの重要性を充分に理解しています。顧客対応の方向性で迷走する心配がなく、SaaSのカスタマーサクセスとして適切な施策を立案できるでしょう。

 

SaaSのカスタマーサクセスに転職するには

矢印とともに走るスーツを着た人々

前述のように、SaaSのカスタマーサクセスへ転職する際に必須の資格はありません。これから転職を目指す場合、まずは自身のキャリアの棚卸しから始めましょう。SaaSのカスタマーサクセスに必要なスキルや経験があれば、転職に有利にはたらく可能性があります。なお、カスタマーサクセスの経験者はいまだ少ない状況であるため、未経験でも応募できる求人が多数あります。求人は一般的な転職サイトでも探せますが、転職エージェントを利用したほうが効率が良いでしょう。求職者の適正や希望条件に合う企業を紹介してもらえる上、未経験可の求人も多く取り扱っています。面接対策のサポートを受けられるので、1人で取り組むよりもSaaSのカスタマーサクセスへの転職を成功させやすくなります。

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カスタマーサクセスはSaaS企業に求められる重要な存在

カスタマーサクセスは、多くの企業に設置されつつあります。中でも需要が高まっている業界が、SaaSビジネスです。SaaSビジネスはサブスクリプションモデルが多く、買い切り型製品よりもサービスを解約されやすい事業と言えます。そのため、カスタマーサクセスによる丁寧な顧客フォローが重要です。顧客に寄り添い最適な提案をすることで、サービスを長く利用し続けてもらえます。

 

SaaSのカスタマーサクセスは企業の利益拡大に重要な存在であり、今後も高い需要が続くでしょう。

 

 

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